2017年01月26日

洋書を読む その1

洋書を読む その1

今回は趣向を変えて洋書について書いてみようと思います。
といっても書評のような大層なことではなく、
個人的に興味を惹かれた内容などをご紹介できればと思います。



今回の本ですがTom Givens著のFighting Smarter: A Practical Guide for Surviving Violent Confrontationsです。
銃器を使用したセルフディフェンスの教本ですね。
著者は米国の射撃スクール「 Rangemaster」のオーナー、そしてメインインストラクターをされてらっしゃる方で、
海外の銃器サイトなどをネットサーフィンしていると度々その名前や記事を目にします。
そして著者の名前と共によく引き合いに出されるのが、Rangemaster受講者の「戦績」です。
過去20年において著者の生徒のうち65名が暴力事件に巻き込まれ、そのうち62名が銃撃戦で勝利しましたが、
3名は不幸にも事件の際に武装していなかったため殺害されてしまったそうです。
しかし、実質的に銃器携帯者の勝率は100%ということになります。
また著者は自身の生徒が巻き込まれた事件を細かく調査し、発砲数や命中率、交戦距離等も記録しており、
生徒の発砲の命中率はなんと95%にも登るそうです。
米法執行官のそれは20%前後だというのはよく目にしますが、それを踏まえると信じ難いような数字です。
「良い射撃スクールを選びたいならインストラクターの教え子達をよく見るべきだ」という箴言があるそうですが
説得力を感じる言葉です。



色々と読み応えのある本ですが、今回取り上げたいのは「民間人の銃撃戦」です。
米国において、民間人が巻き込まれる銃撃戦はどれほどの距離で、また何発ほど撃つものなのでしょうか。
「FBIの統計で銃撃戦の平均距離は○m前後云々」というのを聞いたことがある人もいると思いますが、
著者はこれを民間人の銃撃戦の参考とすることに対し問題点を挙げています。
まず一つ目に、そのFBIの統計はLEOKAに基いており、これは殉職された(戦いに敗れた)法執行官のデータであるということ。
ふたつ目に、法執行官が巻き込まれる銃撃戦は民間人のそれとは状況が異なるものであるということです。

では民間人の銃撃戦は何を参考とすればよいのか、ということになりますが
著者はFBIやDEAの捜査官の銃撃戦データ、そして自身の生徒達が巻き込まれた事件のデータを参考とすることを勧めています。
FBIやDEAの捜査官は一般的な法執行官とは違いパトロール任務等をせず、また基本的にコンシールドキャリーで職務に当たるため
民間人が巻き込まれる銃撃戦と状況が似通うそうです。

そしてそれらの銃撃戦のデータによると交戦距離は・・・
・FBI 6~10フィート(約1.8~3m)の距離が全体の92%
・DEA 平均14.6フィート(約4.5m)
・Rangemaster 3~5ヤード(約2.7~4.5m)の距離が全体の86%

また平均発砲数では
・FBI 3.2発
・DEA 5発
・Rangemaster 3.8発
となるそうです。

著者はこの交戦距離を車(セダン)一台分と例えており、この距離での射撃訓練に重点を置くことが重要であると説いています。(車で例えられるとイメージしやすいですね)
また発砲数ですが、意外にも著者の生徒の中で銃撃戦時にリロードをした生徒は一人もおらず、
弾切れまで撃った生徒も3名だけだったようです。
米国ではリロード訓練の優先度で議論があるようですが、
統計上リロードが稀なのであれば、優先度を下げるのは一応理にかなった考えではあります。
(これは携帯する銃の装弾数で優先度が変わるのでしょうけど)




日本で生活している限り全く関係がない情報ではありますが(笑)、読んでみるとなかなか発見があり、面白いです。
「FBI捜査官は基本的にコンシールドキャリーしかしない」というのは、知っているようで知りませんでした。
言われてみるとたしかに、ドラマや映画で目にするFBI捜査官達はスーツ姿にショルダーホルスターで拳銃を吊ってるようなイメージがあります(笑)
更新されたFBIの射撃能力テストが、全ての項目でコンシールドキャリーからのドローを要求しているのもこのためだったんですね。




他にも民間人の銃器使用を念頭に置いた内容が広く抑えられていて、
コンシールドキャリー装備やEDC装備に興味がある方にはオススメできる一冊だと思います。
著者の考える「良いコンシールドキャリーホルスターの条件」は私も参考にしてホルスターを製作しています。
機会があればこちらもあとで触れてみようかと思います。


Tom Givens,Fighting Smarter: A Practical Guide for Surviving Violent Confrontations
Publisher: CreateSpace Independent Publishing Platform; 3 edition (January 26, 2015)
ISBN-10: 1506027571
ISBN-13: 978-1506027579



タグ :洋書

Posted by カイデックス・アウトフィッターズ at 23:00│Comments(0)洋書
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